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好きなものだけを熱く語ります。

村上龍と文学

○"W村上”

1980年代から文学界を震撼させてきた2人の"村上"が存在する。

1人が今やノーベル文学賞目前とも言われている「村上春樹」。

もう1人が僕の好きな村上龍だ。

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村上龍氏(現在68歳)



 

今でこそ「カンブリア宮殿のおじちゃん」みたいな印象が世間ではあるけど、書いてきた作品を読むと本当に痺れる。

 

文字通り、「痺れる」のだ。

 

これは読んだ人にはわかるはず。

その影響は、村上春樹にまで及んだと言われてるほど。

もうひとつ、僕がこの作品を書くことができたのは、その一年ほど前に村上龍氏が『コインロッカー・ベイビーズ』という力強い作品を書いていたせいもあると思う。僕はその小説の有する長編小説的エネルギー(それは他の何者によっても代換されえないものだ)に揺り動かされたし、それが僕にとってもかなりの創作の刺激になったと思う。優れた同時代のランナーを僚友としてあるいはライバルとしてあるいは目標として(あるいはその全部の混合物として)持てることは、創作をする人間にとっては貴重な財産である。『羊をめぐる冒険』を書くにあたってはそういう刺激がけっこう大きな推進力の役割を果たしてくれた(村上春樹全集の解説にて)

 

 

最近、コロナの影響かオススメの本を聞かれることが多い。

ただ、村上龍の小説は刺激が強いのでダイレクトに提案しづらい時がある。

 

正直、そこまで造詣は深くないのだが、ここでは文学の世界を魅せてくれた村上龍を自分なりに紹介したいと思う。

 

○弾丸のような文章

 

「どんな本なの?」

 

と聞かれたら、"読む麻薬"と答えざるを得ない。

 

改行の少ない濃密な文から想起される、弾丸のような疾走感を持つ文体。

テーマは大体が「日本人としての誇り」みたいなもので、自分ってなんなんだろう?という問いをダイレクトに突き刺してくる。

読んだ後は大抵ボーッとしてしまう(ガチ)

 

ただ、描写は酒・ドラッグ・セックス・暴力が多く、めちゃくちゃ過激だし、気持ち悪くなる人もいると思う。

 

だからあまり人には薦められない....

 

でも、読んだらそれら全てがメッセージを伝えるのに必要な要素だとわかるのだ。

 

なぜなら、「激しい嫌悪」というのはしばしば自分の価値観を浮き彫りにするからだ。

 

人間、「何がしたいの?」と問われても、強い意志がなければ答えられないものだ。

ただ、「これだけはしたくない」とか「これってなんか嫌だ」という感情の方が強くて、それを逆手にとれば自分の中の価値観が洗い出される考えている。

 

村上龍の文章は、激しい嫌悪の逆撫でから「じゃあお前が今存在している環境はどういうことか?」という問題提起をしてくる。

 

村上龍作品はそんなメッセージをあらゆる角度から投げかけてくる。

 

○おすすめ5選

僕の考えなんかダラダラ述べてもしょうがないので、興味が湧いたら手にとって読んで欲しい。

 

結構数が多いので、これってのだけ5つ紹介したいと思う。

 

限りなく透明に近いブルー 1976年(講談社)

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村上龍のデビュー作にして芥川賞受賞作品。

もう本当にこれが描ける意味がわからない。

ストーリーは村上龍自身が20代に過ごした福生市での体験を基にしていて、これが描けるってことは完全に「やっている人」だ。

衝撃度としてかなり強い。

人を選ぶと思うので読むには心して欲しいです、、。(責任は負いません)

 

 

 

②愛と幻想のファシズム 1987年(講談社)

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ファシズム」からわかるようにヒトラーを想起させる主人公の物語。

読みやすいので、これから読んで欲しいです。

普通に楽しめるし、メッセージがガシガシ伝わる。

村上龍は小説を書く時、膨大な量の書籍を読んで当時の経済情勢や風俗を調べ、納得のいくまで取材をしているとか。綿密な構成を基にした村上ワールドの壮大な世界が広がってます。

 

僕が出会ったのは父に薦められた高校生の時。

また読みたいなぁ...

 

5分後の世界 1994年 幻冬舎

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第二次世界大戦で日本が降伏していなかったら...という平行世界を描くSF。

現代日本に対する痛烈なメッセージが伝わります。

「沖縄を犠牲にして無条件降伏した場合は、最終的にアメリカの価値観の奴隷状態になるという予測が出ました、....つまりアメリカ人が持つある理想的な生活の様式をとり入れて、そのこと自体を異常だと気付かないということ、....政治的にはアメリカの顔色をうかがってアメリカの望むような政策をとるしか無くなる、....具体的にいうと、アメリカ人が着ている服を着たがる、アメリカ人の好きな音楽を聞きたがる、アメリカ人が見たがる音楽を見たがる、....そしてそれが異常なことだと気付くことができないくらいの奴隷状態に陥る、....」

個人的には1番好きな作品。

3回読んだ。

 

④インザ・ミソスープ 1997年 読売新聞社

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サイコ・サスペンス。

アメリカナイズされた現代へのメッセージ色が強い。

ドキッとするような問題提起。

この国では誰も神について考えていないのだ、と彼女は思った。...日本人はどこか他の民族に国を占領されたり、虐殺されたり、国を追われて難民になったり、独立するために多くの人が死んだりという歴史的苦難を味わっていない、....目の前に敵が現れて肉親を殺されたり、犯されたり、違う言語を強要されたりしてない、ヨーロッパも新世界も基本的にはそういう侵略と混血の歴史を持っていて、それが国際的な理解の基本になっている、だからこの国の人は外国人に対して排他的なんだ、どう付き合えばいいのかわからない、歴史的に、外国人とリアルに接したことがないんだよ、アメリカ合衆国の場合を除けば、そんな国は世界中で日本しかない、とそのレバノン人の記者は彼女に教えてくれた。...だが日本には他の国にはない優しさがある、...

 

⑤69 -sixty nine- 1987年 集英社

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「え、これ村上龍の作品??」

となるような楽しさ・爽快さが溢れる本。

 

1969年佐世保北高校時代の体験を基にした本。

一通り読んでからこれに手をつけるのがオススメです。

他の作品との振幅に一気に惚れ込むのと間違いなし。

 

読み終わった後のあとがきが気持ちいい。 

楽しんで生きないのは、罪なことだ。わたしは、高校時代にわたしを傷つけた教師のことを今でも忘れていない。数少ない例外の教師を除いて、彼らは本当に大切なものをわたしから奪おうとした。彼らは人間を家畜へと変える仕事を飽きずに続ける「退屈」の象徴だった。そんな状況は、今でも変わってないし、もっとひどくなっているはずだ。...唯一の復讐の方法は、彼らよりも楽しく生きることだと思う。楽しく生きるためにはエネルギーがいる。戦いである。わたしはその戦いを今でも続けている。退屈な連中に自分の笑い声を聞かせてやるための戦いは死ぬまで終わることがないだろう。

 ちなみに、自分の背番号なので愛着が湧く。

 

 

〇文学の裾野は広い

以上、村上龍作品のおすすめを紹介しましたが、他にも「コインロッカーベイビーズ」だったり、エッセイ「すべての男は消耗品である」だったりとまだまだたくさんあります。僕自身もまだまだ読み切れていません。

 

一冊読むのにも結構エネルギーがいるので...(笑)

 

「これおすすめだよー」とか「この本についてどう思う?」とか聞いてくれたりすると嬉しいです。

 

 

『文学』って、響きがいかついし、偉そうなので以前はそんなに興味はなかったのです。でも、村上龍作品を通じて、文学が「いかに作者が設定した世界観の中で、社会的なメッセージを読者個人に伝えるか?」というものだとわかって興味が湧くようになりました。

 

少しでも気になるなーと思っている人には今はいい機会かなと思います。

 

壮大な風景が広がってます。

 

 

 

今後の読書方針としては、村上龍に影響を与えたといわれているジャン=ジュネ、大江健三郎あたりを読んでみたいなって考えてます。

 

楽しみだなぁ。

 

 

 

おしまい。